sohいう話

自由気ままに好きことを長く書きます

さよなら たりないふたり

 

どうも、sohです。

 

Hip-Hopブログです。

それも「Creepy Nuts」第二弾です。

先日リリースされたアルバム「Case」の感想や考察をいちCreepy Nutsファン、いちHip-Hopヘッズとして書けたらなと思います。温かい目でお付き合いくださいませ。

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#1 Lazy Boy

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カップスターとのタイアップソングでもあるが、最近の人気や多忙さを少し面倒くさそう振る舞うのがヒップホップ的だけど、トラップビートとメロディアスなラップで上手くバランスが取れているから聴きやすい。

「三分間だけ時間をくれ」というのもその時間すら惜しいぐらいに忙しい歌舞伎だし、カップ麺の待ち時間ともかかっているのがタイアップへの意識を感じる。

「未来予想図」のリリックで "インスタントではない足跡(即席)を" とあるけど、Rの好きな言葉遊びが分かるのも面白い。

アルバムの一曲目の掴みとしてはすごく良いと思う。

 

#2 バレる!

R-1グランプリのテーマソングかつ出囃子。

「やっと世間が俺様に追いついたか」という主軸が優勝するピン芸人と人気が出てきたCreepy Nutsとで重なる。

お笑い芸人のなかでも狭き門を進むピン芸人の理解され難いけど正義と信じてやるネタがあの舞台で優勝することで全肯定される。その頂に辿り着いたこの上ない幸福感とその先の苦悩を皮肉混じりに歌うのはUMB三連覇を果たしたRだからこそグッと信憑性が増す。

「やっとバレただけで手札全部見せたと思うなよ?」というこれからへのポジティブなメッセージと受け取れる。

 

#3 顔役

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ヤンキー漫画「クローズ」の30周年記念で書き下ろした曲。クローズの世界観とヒップホップのサグな部分を重ねつつ、今の日本語ラップにおいて「俺が顔役だろ?」と歌うのが主人公感があってマッチしてる。

 

「向かい合ったヤツのみが解る この俺の無尽蔵なスタミナ」

「ミラクルなアンサー 被害者の会」

「俺に派手に負けたって自慢アテに ひ孫の代まで一杯やれるぞ」

バトルシーンで最強だったRにしか言えないし、この光景を実際見ていたヘッズは頷くしかないリリックがイカす。

 

学生帽を「学校指定のニューエラ」と比喩したり、「雪の降る町から聞こえて来た サンダルの音が」は長岡出身でハットに半袖短パンだった松永。Rのリリシズムを感じられる曲と思う。

 

#4 俺より偉い奴

Rの今まで、現在、これからの "スタンス"を示しているように感じる曲。

ボスも子分もいないのは自身がナードで日本語ラップの歴史で見れば一番後輩、俺より偉い奴も偉くない奴もいないのはたりない自分よりみんな頑張ってるしたりない自分が一番偉い。

 

産声上げた072は市外局番で大阪府堺市を意味する。

※数字3桁が歌詞に出てきたときは市外局番の頭文字で、地元をレプリゼントしたり出身を意味することが多い。(例: 045は横浜)

 

「たりないボスからもらったバトン」

たりないボスはたりないふたり(オードリー若林・南海キャンディーズ山里)、もらったバトンは「よふかしのうた」

 

「ラスボスからパスされたあのマイクロフォン」

当時フリースタイルダンジョンで"ラスボス"だったラッパー般若から二代目ラスボスを受け継いだ(マイク)

 

「北のボスから言われた即興の16よりセトリの2時間をぶつけ合おうってな」

"北のボス"は札幌のヒップホップグループ「THA BLUE HERB」のBOSS THE MC。たぶんツーマンツアー生業のときにあったBOSSとのエピソードかと。

 

リリックからも読み取れるようにボスも子分も上下関係もないけど、俺にはこれだけの"ボス"がいる。だからそんなものは今までもこれからもないし、今の自分が全てで委ねる。そのときに周りにいる人が味方で仲間だから横の繋がりしかない。

 

 

#5 風来

これまでの自分を振り返りながらも「この曲の向こう側にいるお前はどんな人生を送って来た?」と問われているような気持ちになる。

そして風に乗せられた曲が遠く離れた場所に届いて同じ気持ちになれるならそれは超Hip-Hopじゃんっていう。

意外とここまでストレートに情緒に触れる曲はなかった気がするので新鮮だった。

 

 

#6 のびしろ

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たりないふたりで始まったCreepy Nutsがここまでマラソンして来て、給水ポイントになる曲だと思う。

いろんな経験をして、すいも甘いも味わってそれなりに成長した。でもまだまだ足りない、もっと上に行きたい、どう楽しませるか。

 

「俺らまだのびしろしかないわ」

だから期待してくれよってメッセージにまたワクワクさせてもらえる。

 

 

#7 デジタルタトゥー

デジタルタトゥーとはネット上において投稿した、発信したものは永久にネットに生き続け二度と消すことが出来ないという意味での造語。

 

「消し去りたくなる過去すら 手品(ラップ)にして変えてく万札」というラインがこの曲そのもの。

過去の自分を全てひっくるめた上で自分のラップでそれをも塗り替えていく強い意志を感じた。

 

また、梅田サイファーをフックアップしている気もする。一曲のなかでラップの仕方が変わるし、そのパターンにどこか聞き馴染みがあるところで梅田サイファーのメンバーを彷彿とする。少し無理があるけど、「俺の身体には俺と似たような奴ら(梅田サイファー)も刻まれてる」それもデジタルタトゥー。

 

「みんなちがって、みんないい。」の様々なタイプのラッパーを歌い分けるのにやや似てるところから梅田サイファーのメンバーのラップを真似して気付かれるか絶妙なラインを攻めてるのかもしれない。これは本人にしか知り得ないことでもし聞けて正解だったら自分を褒めてやりたい。

 

 

#8 15才

UMB三連覇、メジャーデビュー、武道館ライブ、その他諸々成し遂げて来たのに未だ鋭く尖ったあの頃の自分に対峙する。

過去という重い重いしがらみから解放されることはない、でもそれをも背負って戦うしかない。

そういった覚悟をただ書き殴ったセンシティブでリアルな内容だと思う。

 

#9 Bad Oranges

デジタルタトゥー、15才、とディープな内面性が二曲が続いた後にこの曲を持ってくる勇気とそれすらも認めてあげられる"ゆとり"が既に彼らの成長を物語ってる。

そしてこの曲はRから松永に送る最大の「ラブソング」だと言ってもいいと思う。

 

リリックに出てくるように金八先生が言う「腐ったみかん」に自分たちを例え、松永へ思う節をただただしたためる。こっちが恥ずかしくなるぐらいストレートで潔いラップ、その気持ちにアンサーするかのようなビートが感慨深い。

 

Creepy Nutsが腐ったみかんかぁ...」

 

 

#10 Who am I ?

Bad Orangesが松永にならこの曲はCreepy Nutsないしにはそれを好いてくれているリスナーに向けたラブソングかもしれない。

 

「俺が誰かを思い出させてくれる景色や街の音に耳を貸せば」

景色はきっとライブ、街の音は店内の有線や渋谷のセンター街みたいな場所から聴こえてくる自分たちの曲で、それらが何者かを実感させてくれる。

 

「俺の帰る場所はここさ」

ラップであり、Hip-Hopであり、Creepy NutsなんだよっていうRの悟りとまで言える穏やかさ。

 

続けてこの二曲はずるいよ。もう充分"たりてる"じゃん。

 

 

#11 土産話

そしてこのアルバムを締め括る最後の曲。

寒空の高架下でやってる屋台のおでん屋で二人と肩寄せて一緒飲んでる、それぐらい激アツな曲。

まるで自分が三人目のCreepy Nutsだと言ってもらえているような、二人で歩んで来た道のりを二人が振り返るなかにもしかしたら自分がいるのかもしれないと。ずーっと優しい温もりに包まれている曲。

 

「例のふたりとダブらしたたたりない所」

たりないふたりに重ねて作ったEP "たりないふたり"

 

「お前が誘導のバイトをしてたフェス 俺ら今トリ前でかましてる」

松永が過去にバイトしていた"DEAD POP"で今じゃ出る側になってる。

 

「この人の前ではただのヘッズ そんなキングとバース分け合ってる」

"キング"はZeebraのことで、キングギドラもかかってる。ラジオイベントのシークレットゲストで登場し一緒に「MR.DYNAMITE」を披露した。

 

「あの日救われた奇跡のフレーズ 擦るその指は世界を奪ってる」

あの日救わせた奇跡のフレーズはたぶんRYHME STERの曲にある「K.U.F.U.」のことで、それを信じてやり続けたら松永はDMCで優勝してた。武器はたゆまぬK.U.F.U.

 

 

Creepy Nuts好きはおろか、ヘッズには胸熱なラインばかりでこんなのずりぃよ。最高の曲だぁ。

 

 

 

ってなわけで、長々書いてきましたが一旦休憩です。結構疲れました(笑)

 

総括すると、今回のアルバム「Case」はこれまでのCreepy Nutsをひとつ区切りにして集大成と言えるレコードだと思います。

そして、Caseという言葉の意味は「実例、事例」

今までCreepy Nutsがどんな道のりを歩んで来たか、その"実例"がこの一枚になっている。

 

個人的にR-指定で言うと自分が影響を受けたであろうラッパーを彷彿とさせるようなフロウやアプローチが節々に感じられてその人たちへのリスペクトも感じます。自分に影響を与えたラッパーたち、つまり過去の"実例"という意味でも「Case」なのかなぁなんてね。(考えすぎかな...

 

Hip-Hopにおいてラッパーは自分のことを歌うことがほとんどなので、歴が長くなるとそれに伴って曲にそのラッパーやグループの歴史や人生が現れてくることが多いです。たりないふたりがリリースされてたからCaseに至るまでしっかりCreepy Nutsの歴史や浮き沈み、彼らの気持ちの変化などが現れていて、「ついにその深みまで来たんだなぁ」と感慨深いです。(何様だよ)

 

とにもかくにも「Case」最高でした!

それに尽きます。

 

そして、これからももっと飛躍して欲しいし活躍が楽しみです。

 

 

あなたたちに救われた一人より。

 

                  敬具。